安全で確実な遺言方式!~公正証書遺言について知ろう

安全で確実な遺言方式!~公正証書遺言について知ろう

「公正役場」とか、「公正証書遺言」という言葉を聞いたことがありますか?
遺言書について少しでも調べたことがあれば、一度は目にする言葉だと思います。なぜならば、現在作成されている遺言書の多くはこの「公正証書遺言」だからです。
とはいえ、公正証書遺言のことを詳しく知っている人は多くないと思います。この記事では、公正証書遺言という言葉は知っていても詳しくは分からないという人、あるいは公正証書遺言を全く知らない人のために、公正証書遺言とは何なのか、どのような特徴があるのかを解説していきます。


遺言には種類がある!

遺言にはいくつか種類があります。が、実際に書くとなったらほとんどの人が「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」のどちらかを選択することになると思います。なぜならば、他の遺言方式は特例中の特例といった、緊急時しか認められないものであったり、実務上ほとんど作成されていない方式だからです。
自筆証書遺言と公正証書遺言は、それぞれメリットとデメリットがあります。それらを把握して、自分に最もあった遺言方式を選ぶ必要があります。

 ★遺言方式についてはこちらの記事もご覧ください。
 遺言にも種類がある!~遺言方式


公正証書遺言とは?

公正証書遺言とは、ごく簡単に言ってしまえば公証人に作成してもらう遺言のことです。
公証人とは、元々検事や判事といった仕事をしていた人の中から、法務省が公証人に任命した人です。つまり、公証人とは法律のプロ中のプロであり、中立・公正な立場で職務を執行する人なのです。
そして、その公証人がいる場所が公証役場です。公証人は全国に約500人おり、公証役場は全国に約300か所あります。

公証人が作成するという説明をしましたが、もちろん遺言者の意思で、遺言者の希望する内容の遺言書を作成します。
公正証書遺言は、遺言者(または代理人等)が公証人と相談して内容を決め、公証人が遺言書としてまとめるのです。
法律のプロである公証人が内容を確認しているので、法律的要件が不足している・不備があるといった理由で遺言書が無効になる可能性が非常に低くなります。

遺言書を公証役場で作成すると、遺言者には正本が交付され、公証役場には原本が保存されます。その為、自筆証書遺言は(法務局へ預けた場合を除いて)紛失・偽造・変造のリスクがありますが、公正証書遺言はその点は心配ありません。

以上のような理由から、一般的に「公正証書遺言は法的に安全で確実な方式である」と言われます。


公正証書遺言のデメリットは?

公正証書遺言は、自筆証書遺言よりも「安全」「確実」と言われることが多いですが、デメリットもあります。

デメリット①

遺言内容を自分だけの秘密に出来ない!

まず1つ目は、公正証書遺言を作成するにはどうしても自分以外の人に内容を知られてしまうことです。
公正証書遺言は公証人、遺言者、証人の最低4人の立会いが必要です。作成の過程で、この4人が遺言の内容を知る事となります。証人は遺言者が自分で選ぶことも出来ますし、公証役場に依頼して用意してもらうことも出来ます。(別途費用がかかります。)
死後まで遺言内容を誰にも言わずに秘密にしておきたい、という人には向いていません。

 

デメリット②

費用がかかる!

そして2つ目は、費用がかかることです。
自筆証書遺言であれば、筆記用具と紙、印鑑さえあれば作成することが出来ます。費用はほぼかからないと言ってよいでしょう。しかし、公正証書遺言の場合は、公証役場に作成手数料を支払う必要があります。金額は人によってまちまちですが、数万円かかるのは間違いないと思って良いでしょう。
作成に費用を掛けたくない人にとってはデメリットと言えます。

 

デメリット③

平日時間をつくって公証役場に行かなくてはならない!

3つ目は、公証役場に行かなくてはならないことです。
公証人に相談をするのも、公正証書遺言を作成するのも、基本的には公証役場に出向いて行います。遺言作成当日は、出張費用を払って公証人に来てもらうことも可能ですが、遺言を作成する前に最低1回は公証役場へ行く必要があります。
多くの人の場合、公正証書遺言を作成するのは初めての事と思うので、複数回にわたって打ち合わせが必要になると思った方が良いでしょう。
公証役場は平日の昼間しか開いていないので、普段会社勤めをしている方など、平日の昼間に時間をつくるのが難しい方には負担になります。
そういった場合は、行政書士などの専門家に委任することで、代わりに公証人との打ち合わせや作成日時の調整を行ってもらうことが出来ます。そうすれば、作成当日だけ公証役場へ行けばOKです。

 


公正証書遺言の作り方~作成前の準備

公正証書遺言を作りたいと思ったら、出来る範囲であらかじめ遺言内容を整理しておくことが望ましいです。
自分の相続人は誰なのか、財産を残したい人は自分とどういう関係の人なのか、自分が所有する財産にはどのようなものがあるのか、といったことです。

さらに、可能であればそれを証明する書類を用意しておくといいでしょう。例えば、遺言者と相続人の続柄が分かる戸籍謄本、遺言書に記載する不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書などです。
もし、こういったことがよく分からない、どのように集めればいいのか分からないという場合は、最初に公証人に相談することも出来ます。

公証人に相談するには、予約が必要です。公証役場に電話をして、日程を調整して予約を入れます。この事前相談は無料です。
公証人に相談しながら、具体的にどのような内容の遺言にするのか決めていきます。
遺言者が集めなくてはならない書類がある場合は、公証人に指示されます。
内容が決まったら、公証役場で遺言書を作成する日を決めて予約をします。

公証役場での遺言書の作成には、遺言者本人、公証人の他に、証人が2人以上必要になります。
証人は相続人等の利害関係者はなれない決まりがあります。自分で友人や知り合いに頼むことが出来れば、それで問題ありませんが、自分で証人を用意できない場合は、公証役場で用意してもらうことも出来ます。ただし、費用がかかります。


公正証書遺言の作り方~作成当日

予約をした公正証書遺言作成日にはどのようなことを行うのでしょうか。

遺言者、公証人、証人2名以上が揃ったら、公証人がまず遺言者に簡単な質問をします。内容は、氏名・生年月日・住所・職業などの基本的な事です。この質問によって遺言者の本人確認を行います。
さらに、証人にも同様に氏名や生年月日等を質問して本人確認を行います。
次に、公証人が遺言者に遺言の内容について簡単な質問をします。例えば、「今回はどなたに財産を残したいと考えていますか?」「〇〇ということを伺っていますが、それで間違いありませんか?」といった感じです。こういったやり取りの中で、遺言者の遺言意思の確認や、遺言能力があるかどうかの確認を行います。

ここまでで特に問題がなければ、公証人が遺言者と証人に、事前に用意しておいた遺言書を配布し、公証人が内容を読み聞かせます。
その後、遺言者と証人が内容が間違いないことを承認した後、公正証書遺言に各自が署名し、押印します。
この時に、もしも遺言者が署名出来ない事情がある場合は、公証人がその事由を付記して署名に代えることが出来ます。
最後に、公証人が民法所定の方式に従って作成したものであることを付記し、これに署名して押印します。
これで公正証書遺言は完成です。

その後、公証役場から遺言者に「正本」と「謄本」が交付されます。この「正本」と「謄本」に法的効果の違いはありません。
原本は、公証役場に保管されます。

公証役場に作成手数料を支払ったら、終了となります。


公正証書遺言の作成にはいくらかかる?

公正証書作成の手数料は、公証人手数料令によって定められているので、公証人や公証役場ごとに異なるということはありません。

公証役場に支払う公正証書遺言の作成手数料は、まず「相続人(受遺者)ごと」に「目的価額」(その行為によって得られる一方の利益、相手から見ればその行為により負担する不利益ないし義務を金銭で評価したもの)を算出します。その合計額によって手数料の額が変わります。

例えば、目的の価額が「500万円を超え1000万円以下の場合は1万7000円」、「1000万円を超え3000万円以下の場合は2万3000円」・・・といったように決められます。

その他、遺言の場合は遺言加算が発生し、目的価額の合計額が1億円までの場合は1万1000円加算されます。
また、「祭祀の主催者の指定」を記載すると1万1000円加算されます。
さらに、交付手数料も正本・謄本の交付1通につき250円かかります。
公正証書遺言の原本の保管料は無料です。

最終的にこれらの額全てを計算し、合計額を遺言作成日当日に支払うことになります
以前は支払いは現金のみでしたが、近年クレジットカード払いも可能になりました。支払金額が高額になることも多いので、個人的には非常に便利になったと感じます。

料金の計算は公証役場が行います。作成当日よりも前に、金額を提示してくれるので、当日までに準備をしておきます。


公正証書遺言を選ぶかどうかは自由!

公正証書遺言にはメリットとデメリットがあります。
遺言者が何を優先させるのか、どのようなことを心配しているのかによって、自筆証書遺言にするか、公正証書遺言にするかを選びます。

自筆証書遺言であっても、公正証書遺言であっても、しっかりとルールを守って作成された遺言書であれば効力は同じです。どちらでも、同じように相続手続に使うことが出来ます。
実際に遺言書が必要になるのは、遺言者がいなくなってからです。自分がいなくなった後の事を想像して、誰が遺言書を必要とするのか、遺言執行者は誰か、どのような手続きが必要になるのかといったことを踏まえて、最適な遺言方式を選択するべきです。

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北野早紀行政書士事務所
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