遺言にも種類がある!~遺言方式について解説

遺言にも種類がある!~遺言方式について解説

遺言書と一口に言っても、色々な種類があることをご存知でしょうか。
自分ひとりで簡単に書くことが出来るものもあれば、他人に協力してもらわなくては書けないものもあります。
それぞれ、メリットとデメリットがあり、どれが一番良いと一概にいう事は出来ません。

この記事では、遺言書にはどのような種類があるのかを紹介します。


遺言の種類を紹介!

遺言にはいくつか種類があります。一般的に知られているのは、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2つでしょう。
このほかに、「秘密証書遺言」というものもありますが、実際に書こうと思った時は、ほとんどの場合「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」のどちらかを選択することとなります。

この3種類は、法律では「普通方式」の遺言としてまとめられています。

具体的にどのような違いがあるのか、見ていきましょう。


自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者がその全文、日付および氏名を自書し、これに印を押す遺言です。
相続財産の全部または一部の目録を添付する場合には、その目録については自書する必要はありませんが、その目録の各ページに署名し、印を押さなければなりません。
自分ひとりで作成でき、費用もかからないので、もっとも作成が簡単な遺言ということが出来ます。

しかし、遺言書の管理方法についての定めはなく、多くの場合は遺言を書いた人が自宅で保管をしています。
その為、遺言者が亡くなった後に発見されない可能性や、発見されたあとに偽造・変造・遺棄等される恐れがあります。

また、折角書いた遺言であっても、法的なルールが守られていなければ意味がなくなってしまう可能性があります。
前記事(遺言に書けることは決まっている!~遺言事項について)でもふれたように、遺言できることはきまっていますし、書いた人が正しい知識を身に着けていないと遺言の内容が法的要件を満たしていなかったり、有効な方式でない場合があるからです。

そういった遺言の場合は、その遺言が有効なのか無効なのかを巡って、かえって残された人の間で争いになってしまうこともあります。

ただ、法務局で遺言書を保管する仕組みが近年できたので、その制度を利用することである程度リスクを軽減することが出来ます。
これは「遺言書の保管制度」というものです。
遺言書を預かる際に形式的な要件を法務局が確認してくれるので、最低限の法的なルールが守られた遺言書を作成できます。
さらに、法務局で遺言書を保管してくれるので、遺言書が紛失してしまったり、保管中に誰かが改竄してしまったりする可能性がなくなります。
自筆証書遺言のデメリットを、ある程度少なくしてくれる制度と言えるでしょう。

 ★自筆証書遺言についてはこちらの記事もご覧ください。
  一番簡単に書ける遺言!~自筆証書遺言について知ろう


 

公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言者が公証人役場に行くか、公証人に出張してもらって、公証人に作成してもらう遺言です。
遺言書の原本は公証人役場に保管され、遺言者には正本が交付されます。

この方式は、内容を相談した上で公証人が遺言を作成するため、遺言内容や方式の法的要件について心配せずにすみます。
さらに、公証人役場で保管もしてもらえるので、紛失や偽造の恐れもなく、安全です。

ただ、費用がかかってしまうことはデメリットと言えます。
かかる費用は、遺言に書く財産の価値の合計額や、遺言内容等によって変わるので、人によって異なります

費用の計算はいつを基準にするのか、と良く聞かれますが、これは遺言作成時点のものです。
遺言を書いた後、亡くなるまでの間に資産が減ることが予想されても、遺言作成時点での価値を基準とします。

  ★公正証書遺言についてはこちらの記事もご覧ください。
   安全で確実な遺言方式!~公正証書遺言について知ろう


 

秘密証書遺言

秘密証書遺言は自筆証書遺言と同じく私文書の上に書かれますが、公証人にこれを遺言書として公証してもらう遺言です。

自筆証書遺言と公正証書遺言の間のような存在と言えます。

秘密証書遺言は自筆証書遺言と違い、遺言書全文の自書は要件ではありません。ただし、証書への署名と印は必要です。

公証人役場へ支払う費用はかかりますが、公正証書遺言よりは安価です。

判断能力が低下している高齢者に、周囲の人が自分に有利な内容の遺言を押し付ける可能性がある等の問題があり、制度の廃止論もあります。

 

普通方式以外の遺言がある?

この記事では普通方式について紹介しましたが、実は遺言書にはもう一つの方式があります。

それは「特別方式」と呼ばれるものです。
特別方式は「危急時遺言」「隔絶地遺言」に分かれます。
もっと細かく言うと、急時遺言はさらに「死亡危急時遺言」「難船時遺言」、隔絶地遺言は「伝染病隔離時遺言」「在船時遺言」に分かれます。

この特別方式とは、その名の通り、普通方式でどうしても遺言が残すことが出来ない特別な状況の時だけ許される方式なのです。

例えば、遭難した船の中にいる時や、伝染病で隔離されてしまった場合など、特殊な状況下でしか作成出来ません。

特別方式の遺言は、あくまで普通方式の遺言を残せない場合の特別措置なので、遺言者が普通方式遺言を作成することが出来るようになった時から6か月生存すると効力がなくなります。遭難船の例でいえば、一度遭難したものの救助され、体調も回復した、というような場合です。

このように、特別方式はかなり特殊なものなので、一般的には知られていませんし、特に知る必要もないものなのです。

 

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