遺言の基本を知ろう!

遺言の基本を知ろう!

最近はメディアでも取り上げられることが増え、終活ブームもあった影響で、遺言書という言葉自体は、知らない人は少なくなってきました。
しかし、遺言書という言葉は知っていても、どんな時に必要なのか?どうやって書けば良いのか?そもそも遺言書とは?という問いにすぐ答えられる人は少ないと思います。
この記事では、遺言書の基本の知識を紹介していきます。


そもそも、遺言とは?

遺言は、正しくは「いごん」と読みます。しかし、一般的には「ゆいごん」という読み方をすることが多いと思います。
当事務所でも、お客様とお話する時には耳馴染がある「ゆいごん」という言葉を使うことが多いです。

ある人が自分が亡くなった後のことを考えた時に、誰にどのような財産を残すのかを書き残したもの、それが遺言書です。
遺言とはその人の最期の意思表示だという事が出来るでしょう。

法律で定められた行為であり、遺言書がある場合とない場合では相続手続きの進め方が大きく違います。
遺言書が残されている場合は、原則的に遺言書の内容に基づいて遺産を分割することになります。遺言書が残されていなかった場合は、相続人全員で話し合って遺産分割協議書を作成しなくてはなりません。

家庭裁判所の遺言検認申立件数は、1949年には367件だったのが、1980年代以降着実に増加し、2000年代には1万件を超えました。
また、検認を要しない公正証書遺言の作成件数も増加しています。2014年以降10万5000件~11万件ほどで推移しており、令和元年には11万3137件でした。

このように、遺言書に興味を持つ人や実際に作成する人は増えてきていると言えます。


知っておきたい遺言のポイント!

遺言にはいくつか知っておくと良いポイントがあり、遺言書のことを知っているつもりでも意外と勘違いして覚えてしまっている人も多いです。
ここでは、そんな遺言のポイントを挙げていきます。

ポイント①

自分ひとりで書くことができる!

 

遺言は単独行為です。どういう意味かというと、遺言を残すのに誰かの許可や承諾はいらないということです。
公正証書遺言を作成するには、公証人役場で公証人と証人の立会いの下作成しなければならないといったことや、有効な遺言を残すためには最低限のルールを守らなければならないということはありますが、それはその人の遺言を残したいという意思を妨げるものではありません。

ポイント②

書いた人が亡くなった後に効力が発生する!

 

原則的に、遺言書に書いたことは、書いた方が亡くなった後に初めて効力が発生します。
当たり前と言えば当たり前ですが、遺言者が生きている間のことは書くことが出来ません。

ポイント③

遺言書に書けることは法律で決まっている!

 

たまに、遺言書を遺族にあてた手紙の様に考えていらっしゃる方がいて、自分の気持ちや遺族へ伝えたいことを自由に書いて良いと思っている場合があります。
しかし、実際は遺言書に書けることは法律で決められており、これを「遺言事項」と言います。

このように遺言書に書ける内容を法律で決めるのは、遺言書は相手が知らない間に作成できることと、死後効力が生じると、相手方を拘束する力があることが理由として挙げられます。相続手続きの場面では、遺言は強い力をもつので、勝手気ままに色々な事を書くのではなく、きちんと法律に則って書かれなければならないのです。

  ★遺言事項についてはこちらの記事もご覧ください
  遺言に書けることは決まっている!~遺言事項について

 

ポイント④

遺言書はいつでも撤回できる!

 

遺言書を書いてしまうと、あとから撤回出来ないと思っている方がたまにいらっしゃいます。
そんな方は、遺言書を書いたら不動産が処分できなくなる…とか、預貯金の額を大きく変えられない…と勘違いされ、遺言作成を躊躇されてしまうことがあります。

遺言書を書いてから、その方が日常生活や事業を続ける中で、遺言書に書いた財産の状況が変わってしまったり、気持ちが変わってしまうということは十分考えられます。そんな時、もしも撤回が出来ないと困ってしまいますので、当然、遺言書は自由に撤回や書き直しをすることが認められています

公正証書遺言の場合は、書き直しや撤回も公証役場で公証人に行ってもらうので、多少の手間はかかりますが、希望して所定の手続きを踏めば可能です。

自筆証書遺言の場合は、自分自身で書き直したりすれば良いので簡単ですが、書き直す際の書式のルールがあるので、事前に良く調べた方が良いです。適当に書き直した結果、遺言書が無効になってしまったら大変です。


遺言が無効になる!?~遺言能力とは

希望すれば、遺言書は誰でも書くことが出来るのでしょうか?

まず、年齢の制限があります。有効な遺言書を書くことが出来る年齢は15才以上と法律で決められているのです。

15歳以上の人の場合、次に問題となるのはその人に「遺言能力」があるかどうかです。

遺言は法律行為であり、遺言を有効とするためには「その内容を理解し、結果を弁識し得るに足る意思能力」が必要です。これを「遺言能力」と言います。
この遺言能力がない場合は、例え遺言を残したとしても無効となってしまいます。

裁判で遺言能力が争われる事案のほとんどは、判断能力が低下した高齢者の遺言です。
例えば、生前認知症を患っていた方の遺言書が残されていた場合、遺言書を作成した時点で認知症がどの程度進行していたのか?ということが問題となることがあります。つまり、「内容をきちんと理解して書いていたのか?」「周囲の一部の人が、無理矢理書かせたのではないか?」と疑われやすいのです。

特に、遺言書によって一部の人だけが遺産を相続するような、極端な遺産分割が指定されている場合、トラブルのもとになりやすいです。
遺言によって不利益を受ける相続人が、「この遺言は無効だ!」と争うことがあり得ます。

こういったトラブルをなるべく回避する為には、遺言を公正証書遺言にしたり、客観的に判断能力が十分あったと証明できるものを残したりすると良いでしょう。

以上のことはまとめると、「15歳以上」で、「遺言能力が十分ある人」であれば、遺言を残すことが出来ると言えます。


遺言には種類がある!

遺言には方式が決められています。
まず普通方式と特別方式に分かれ、普通方式がさらに「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」に、特別方式はさらに「危急時遺言」「隔絶地遺言」に分かれます。そしてさらに危急時遺言と隔絶地遺言は細分化されます。

しかし、実際に多くの方が関わるのは、このうち「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類と言ってしまっていいと思います。
この2種類についてはそれぞれメリットデメリットがあるので、どちらの方が良いということは一概には言えません。
特徴をよく知り、自分に最もあった方式を選ぶ必要があります。

 ★自筆証書遺言と公正証書遺言について、詳しくはこちらの記事をご覧ください
  一番簡単に書ける遺言!~自筆証書遺言について知ろう
  安全で確実な遺言方式!~公正証書遺言について知ろう

 

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お客様一人一人に寄り添った対応を心がけています。

北野早紀行政書士事務所
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