日本国籍を取得するには?~帰化について解説!

日本国籍を取得するには?~帰化ついて解説!

外国人が日本で長く安定して生活するためには、「帰化する」という方法があります。
帰化する場合は、在留資格(ビザ)を取得するのとは全く手続きの方法や申請先が異なります。
ここでは帰化するとはどういう事か、どうすれば取得できるのかについて解説します。


帰化とは?

「帰化する」ということは、日本国籍を取得することを意味します。
そもそも国籍とは、特定の国の構成員である=国民であるための資格のことを言います。つまり、外国人は帰化した時=日本の国籍を取得した時から「日本人」となるのです。
日本の国籍を取得するには、3つの方法があります。それは、出生、届出、帰化です。ここでは詳しい説明は省略しますが、出生は、母や父が日本人であった場合などが当てはまります。届出は、日本人父と外国人母が結婚する前に生まれた子などが当てはまります。
そして、帰化は、外国人が帰化許可申請をし、それを国家(法務大臣)が許可することを言います。帰化の申請には様々な条件があり、提出書類も非常に多くなります。また、一般的な条件をクリアして、必要な書類を全て提出していたとしても必ず許可されるものではありません。


帰化するメリットとは?

厳しい審査を苦労してクリアしてまで、帰化をするメリットとは何でしょうか。

在留資格の手続きが一切必要なくなる

外国人ではありませんので、在留資格の手続きは勿論必要なくなりますし、在留カードもなくなります。

日本の戸籍を持つことが出来る

帰化をすると、その人の日本の戸籍が作成されます。
例えば、日本人の配偶者や子供がいる場合、戸籍の表示が帰化をする前と後で大きく変わります。外国籍の場合は、例え日本人と結婚したとしても、配偶者と同じ日本の戸籍に入ることは出来ないからです。帰化をすることで、家族がみな同じ戸籍に入ることが出来ます。

日本のパスポートになる

今まで使っていた本国のパスポートではなく、日本のパスポートが発行されます。
日本のパスポートであれば、今まで日本から出国する際に必要だった再入国許可も必要なくなります。
さらに、日本のパスポートは世界的に見ても非常に信頼度が高いので、多くの国にビザなしで行くことが出来ます。実は、日本のパスポートはビザなしで渡航できる国が世界で最も多く、その数は192か国にものぼるのです。(2022年11月時点)

選挙権と被選挙権が得られる

日本の国籍を取得することで選挙権と被選挙権を得られます。

社会保障

日本人と同様の社会保障(年金、保険、福祉など)を受けることが出来ます。

職業を自由に選択することが出来る

帰化をすることで職業の制限がなくなります。
こう書くと、「永住ビザでも同じじゃない?」と考える人がいるかもしれません。確かに、永住ビザの場合でも、ほとんどの職業に就くことが出来るようになりますが、外国籍のままでは公務員になることが出来ません。帰化で日本国籍を取得すれば、公務員になることも出来ます。

社会的信用

日本人になることで、期限付きの在留許可で日本に在留しているときよりも、社会的な信用も増します。例えば、住宅ローンを組むのも簡単になり、銀行からの融資も受けやすくなります。

永住と帰化の違いとは?

帰化も永住も在留期間や活動内容の制限がなく、似ている部分もありますが、全く違うものです。

一番の大きな違いは、国籍が変わるかどうかということです。
永住ビザを取得しても国籍は変更されませんので、本国の国籍のままで日本に生活拠点を置いて長く生活することが出来ます。
一方で、帰化は本国の国籍から離脱して、日本国籍を取得します。出身国の国籍がなくなってしまうので、出身国からみて外国人になってしまいます。

永住ビザの場合は選挙権や被選挙権はありませんが、帰化すればそういった権利も得られます。
また、永住ビザは在留期間の定めも活動制限もありませんが、犯罪を犯してしまったりして退去強制事由に該当した場合は、退去強制手続きの対象となります。他方、帰化の場合は「日本人」なので、退去強制などの対象になる事はありません。

帰化した後、簡単に元の国籍に戻すことは出来ません。
メリットとデメリットを知り、帰化するかどうかは慎重に判断しなくてはなりません。

 


帰化の条件とは?

帰化にはいくつもの条件があります。ここでは一般的な条件を紹介します。

条件①

住所条件

帰化の申請をする時まで、引き続き5年以上日本に住んでいることが必要です。
長期間にわたって海外に滞在してしまうと、この「引き続き」という条件を満たせなくなってしまうので注意しましょう。
短期の海外旅行や、短期留学であれば問題ないことが多いですが、例えば1年以上海外にいた場合などは、そこで年数のカウントがリセットされてしまう可能性が高いです。
1回の出国で3か月以上日本を留守にした場合や、1年間で合計100日以上海外にいた場合は要注意です。

また、就労していた期間も重要です。5年のうち、在留資格をもって正社員として働いていた期間が3年以上なくてはいけません。同じ職場で続けて就労していなくても良いので、転職をしていても大丈夫です。
就労については、要件が緩和されることがあります。それは、日本に10年以上日本に住んでいる場合です。この場合は、就労していた期間が1年以上あれば申請出来るとされています。

 

条件②

能力条件

単独で申請をするには、年齢が18歳以上で、かつ、本国の法律によっても成人年齢に達している必要があります。
親と同時に申請をする場合であれば、年齢が18歳未満であっても大丈夫です。

 

POINT③

素行要件

素行が善良でなくてはなりません。素行が善良かどうかの判断は、犯罪歴の有無や納税状況、年金の支払い状況など色々な要素からなされます。
犯罪歴について、例えば交通違反をしてしまったことがある場合はどうでしょうか?
それが一時停止無視などの軽微な交通違反で、回数が少なければ問題ない場合が多いです。しかし、重大な違反であったり、軽微なものであっても何回も繰り返しているようであれば厳しく見られるでしょう。
また、納税状況などは申請をする本人だけではなく、一緒に暮らしている家族についても審査されます。経営者の場合は、経営する会社の法人税や法人事業税といった税金の納税状況についてもチェックされます。

 

条件④

生計条件

日本で今後暮らしていくのに、不自由なく生活できるだけの収入がなくてはなりません。
申請者自身が配偶者の扶養に入っている場合など、申請者本人はほとんど収入がないということもありますよね。その場合であっても、生計を一つにする親族単位で判断されるので、他の方の収入で安定した生活を送ることが出来ると証明できれば問題ありません。
生活保護を受けて生活しているような場合であっても、絶対に不許可になるわけではありません。生活保護以外の収入がどれほどあるかが審査されます。
この条件では、現在の収入で安定した生活が出来るかどうかをみられます。そのため、帰化の申請中に失業してしまったり、生計をたてていた配偶者と離婚して自身の収入だけでの生活が難しくなってしまった場合は、条件を満たさないと判断される可能性があります。

 

条件⑤

重国籍防止条件

日本は重国籍を認めていません。帰化申請する場合は、無国籍であるか、帰化によってそれまでの国籍を喪失しなくてはなりません。
例外として、本人の意思で本国の国籍を喪失することが出来ない場合は、この条件を備えていなくても帰化できる場合があります。

 

条件⑥

憲法遵守条件

テロ行為を企てたり、テロ思想を主張するような人、そういった団体を結成したり加入していたりしている人は、不許可となります。

 

日本語能力は審査される?

法務省の「国籍Q&A」で帰化の条件として公表されているのは上記の①~⑥です。

しかし、条件として項目は設けられていませんが、「日常生活に支障のない程度の日本語能力(会話及び読み書き)を有していることが必要」と書かれています。

実は、この日本語能力も非常に重要な審査のポイントです。
帰化申請をすると、法務局が日本語能力を確認する為にテストをすることがあります。これは必ず行われる訳ではありません。それまでの面談の様子や、提出された書類を見て、テストが必要だと判断された場合に実施されます。
日本語テストでは、漢字、ひらがな、カタカナの書き換えや、簡単な文章問題などが出されます。
レベルについては、よく、小学校低学年~3年生程度の日本語能力が必要と言われます。このテストの結果次第では、帰化申請が不許可になってしまいます。

会話は問題ないけど、読み書きが苦手…というような方は、申請をする前にある程度練習をしておいた方がいいかもしれません。

 


帰化の条件が緩和されるケース

以上のように、帰化するためには多くの条件をクリアしなくてはなりません。
しかし、一定の身分や条件に当てはまる人は、帰化の条件が緩和されたり、免除されたりします。
これは「簡易帰化」と呼ばれます。どのような場合が簡易帰化に当てはまるのか、紹介します。

 

住所条件を満たしていなくても申請可能になるケース

  • 日本国民であった者の子(養子を除く)で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有するもの
    →例えば、両親が外国に帰化している外国人の場合などが当てはまります。
  • 日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く)が日本で生まれたもの
    →例えば、日本で生まれた在日韓国人・朝鮮人の方が当てはまります。
  • 引き続き10年以上日本に居所を有する者
    →例えば、就労経験が1年程度で10年以上日本に在留している方が当てはまります。

 

住所条件と能力条件を満たしていなくても申請可能になるケース

  • 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有する者
    →例えば、日本人と結婚している外国人が当てはまります。日本人と結婚する前の期間も含めて、引き続き3年以上日本で生活していれば要件を満たします。
  • 日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有する者
    →例えば、日本人と結婚している外国人が当てはまります。一つ前と異なるのは、日本人と結婚してから外国で生活していたとしても、直近1年間を日本で暮らしていれば要件を満たすという事です。

 

住所条件・能力条件・生計条件を満たしていなくても申請可能になるケース

  • 日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有する者
    →例えば、両親だけが帰化していた場合などが当てはまります。
  • 日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であったもの
    →例えば、外国人が日本人と再婚し、日本で暮らすことになった外国人の連れ子などが当てはまります。
  • 日本の国籍を失ったもの(日本に帰化した後日本の国籍を失った者を除く)で日本に住所を有するもの
    →例えば、外国籍になった日本人が再度日本国籍に戻る場合などが当てはまります。
  • 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有する者
    →両親が出生地主義を採用している国の国籍で、日本で出生したことにより無国籍になってしまった場合が当てはまります。

帰化申請の流れは?

ここでは、帰化申請の手続きの流れについて説明します。

  1. 法務局又は地方法務局に相談する
    在留資格に関しては地方出入国在留管理局に申請しますが、帰化の申請先は法務局又は地方法務局になります
    まずは、予約をとって法務局を訪問し、帰化申請について相談をするところからスタートします。
    相談の際は、初めて日本に来た時から現在に至るまでの経緯などを確認します。その時点で、要件を満たしていないと判断されると、次のステップへは進めません。要件を満たしていると判断されれば、必要書類を教えて貰えます。

  2. 帰化申請の準備をする
    法務局で教えて貰った必要書類を集め、帰化申請に向けて準備をします。日本で取得できるものもありますが、本国で取得しなくてはならない書類もたくさんあります。集めなくてはならない書類が非常に多いので、多くの人が苦戦するところです。
    また、申請書など、自分で書かなければならない書類も多いです。この手書き文書の内容や書かれた文字などが、後々日本語能力が十分かどうかの判断材料になることもあるので、大変ではありますが慎重に、丁寧に書きましょう。

  3. 法務局で申請書類を確認
    法務局に予約をとり、用意した書類を確認してもらいます。一度確認してもらってから、追加書類が必要になる事が多いです。
    提出書類が揃って不備が無ければ、申請が受理されます。

  4. 面接
    書類を提出してから数か月後に、法務局で面接をします。
    提出した書類の内容についての確認や質問、現在の状況の確認等を行います。
    面接は、本人だけではなく家族についても行われます。
    基本的には、正直に落ち着いて答えれば問題ありませんが、質問の仕方が意地悪だったりすることもあるようです。
    また、勤務先への在籍確認や自宅近辺への聞き取り調査が行われることもあります。

  5. 結果
    許可・不許可の結果が出ます。申請から結果が出るまでの時間は、人によってそれぞれですが、目安としては1年程度です。
    許可された場合は、官報に名前が掲載され、許可の電話がきます。
    その後法務局へ行き、所定の手続きを終えれば完了です。
    日本戸籍は、法務局からもらった書類を市役所へ持っていくとつくられます。

帰化申請の必要書類は?

法務省のQ&Aには必要書類として以下のものが挙げられています。
国籍を証明する書類や、身分関係を証明する書類については、原則として本国官憲が発給したものを提出しなくてはなりません。

実際は、申請する方の現在の国籍や、身分関係、職業などによって必要な書類が異なり、このリストに書いていない書類も提出を求められます。実際に提出しなくてはならない書類については、法務局に相談した際に指示されます。

  • 帰化許可申請書
  • 親族の概要を記載した書類
  • 帰化の動機書
  • 履歴書
  • 生計の概要を記載した書類
  • 事業の概要を記載した書類
  • 住民票の写し
  • 国籍を証明する書類
  • 親族関係を証明する書類
  • 納税を証明する書類
  • 収入を証明する書類

 

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北野早紀行政書士事務所
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