遺産分割協議でつまずくパターンとは!?

遺産分割協議でつまずくパターンとは!?

相続手続を始めると、多くの人が「遺産分割協議書」という言葉を耳にすると思います。遺産分割協議書を相続人自身で作成しようとしても、どう書いたら良いのか分からなかったり、なかなか思うように進まなかったりすることもあります。
この記事では、遺産分割協議書を作成するまでにつまずきやすいポイントについて紹介します。


そもそも、遺産分割協議とは?

遺産分割協議とは、相続人が亡くなった方の財産をどのように分けるのかを話し合って決めることです。そして、その結果を書面にまとめたものが「遺産分割協議書」になります。
この、遺産分割協議書は、亡くなった方の口座のお金を相続する時や、土地や家と言った不動産を相続する時に必要となるものです。
逆に言えば、遺産分割が無事終わり、遺産分割協議書が完成しないと、預金や不動産の相続手続きは難しいという事になります。

遺産分割協議がすんなりまとまり、何の問題もなければ良いのですが、何かしら揉めてしまったり、トラブルが起こったりすることも多いです。

ちなみに、亡くなった方が遺言書を残していた場合は、原則的に遺言書の内容に基づいて手続きが行われますので、遺産分割協議は必要ありません。

★遺産分割協議書の作成については、こちらの記事もご覧下さい。
  相続に必要な手続き⑤~遺産分割協議


遺産分割協議でつまずくパターンとは!

ここからは、遺産分割協議で問題となりやすいことを紹介していきます。

パターン①

想定していなかった人が「相続人」だった!

亡くなった方の財産を相続出来る人は法律で決められています。相続する権利を持つ人のことを、「法定相続人」と言います。

生前一緒に生活していた妻と子供だけが法定相続人になるような場合は特に問題ないのですが、親族関係が複雑になってくると、思いもよらない人が相続人になることがあります。
例えば、亡くなった方が離婚・再婚していて、前の配偶者との間に子どもがいた場合は、前の配偶者との子供にも相続権があります。

また、亡くなった方に子どもがおらず、両親が既に他界していた場合、兄弟姉妹が法定相続人となります。兄弟姉妹が既に亡くなってしまっている場合は、その子ども(亡くなった方から見て甥や姪)が相続権を得ます。兄弟姉妹がたくさんいる場合、相続人の人数がとても多くなってしまうことがあります。

以上のように、相続人を把握しているつもりでも、改めて戸籍を調べてみて初めて予期せぬ相続人が出現することもたくさんあります。普段親交が無い人同士で話し合いを進めなければならず、行き詰ってしまうことも少なくありません。

パターン②

相続財産が不動産に偏っている!

相続財産に含まれるものは、銀行口座の預金や、不動産、有価証券、高価な貴金属や美術品、自動車など様々です。
例えば、相続財産のほとんどが預金や現金だった場合、極端に言えば1円単位で分けることが出来るので、受け取る割合さえ決めてしまえば相続人間での遺産分割はさほど難しくないでしょう。

しかし、相続財産のほとんどが不動産だった場合はどうでしょうか。元々住んでいた家と土地があり、他の相続財産が少額の預金だった場合などです。そこに今も住んでいる相続人がいれば、当然、自分が住んでいる家と土地を相続したいと考えるでしょう。しかし、例えば、その家と土地の価値が2000万円あって、銀行の口座預金が100万円だとしたら、不動産を相続する人以外にとっては、例え口座預金全額を受け取ったとしても不公平になってしまいます。

相続人間の公平性を保つための方法はいくつかありますが、絶対にこうすれば揉めないという方法はありません。お互いの妥協点を探す必要があります。この話し合いがうまくまとまらないと、いつまでたっても遺産分割協議書が完成しないのです。

パターン③

相続人が行方不明!

ポイント①で説明したように、想定していなかった人が相続人になる場合があります。先に紹介した例の中で言うと、再婚前の配偶者との間の子どもが相続人になる場合、現在の配偶者やその子どもと一切交流がないことも多く、それどころか、前の配偶者との間に子どもがいたことすら知らなかった、ということもあります。会ったことも名前を聞いたこともないような人が相続人だと判明した場合、その人が今どこで何をしているのかも当然わかりません。
また、昔は親交があったけれど、今の所在が全く分からないということもあります。親族の誰とも親交がなく、行方不明状態の場合もあります。

これが大きな問題となる理由は、「遺産分割協議は必ず法定相続人全員で行わなくてはならない」というルールがあるためです。
住所も連絡先も分からないからといって、その人を抜きにして遺産分割協議をしてしまうと、折角意見をまとめても後で無効となってしまいます。
そのため、相続放棄をした人を除いて、何が何でも相続人全員と連絡をとって、全員が納得する内容で相続手続きをしなくてはならないのです。

専門家に依頼すると、亡くなった方の戸籍を辿ることで、相続人の現在の住民票上の住所地までは突き止められることが多いです。(これも絶対突き止められる訳ではありません。)
しかし、住民票上の住所に今も住んでいるとは限りませんし、手紙を送ったり訪問したりしても、相手方が応じてくれるかは分かりません。住所を突き止めても、そこから先に進むのが難しいこともあります。

パターン④

どこにどんな財産があるのか把握しきれない!

亡くなった方がどのような財産を持っていたのか、知っているようで実は知らないということはよくあります。一部は把握しているけれど、実は家族も知らない財産が他にあった、ということは珍しくないのです。
例えば、普段の生活で使用している銀行口座の他に、昔付き合いで作った他の金融機関の口座があったとか、家族には知らせていなかったけど資産運用をしていたとか、そういったことです。

また、不動産に関しても、小さい田畑をあちこちに持っている場合や、不動産価値がほとんどないような山林を持っていた場合は注意が必要です。不動産価値が低い土地は、固定資産税がかからない場合もあるので、毎年送付される「固定資産税納税通知書」が発行されないのです。固定資産税を払っていない不動産はついつい見落としがちです。

もしも、遺産分割協議書を作成した後に新たな相続財産が見つかった時は、新しく見つかった財産に関して再度遺産分割協議をしなくてはならず、非常に大変です。

また、全ての相続財産を把握しきれないままでいると、相続財産の全体の価値がいくらかも出すことが出来ません。つまり、相続税の申告が必要かどうかを正しく判断できなくなってしまうのです。相続税の申告は10か月以内という期限が設けられている為、期限内に全ての相続財産を把握し、相続財産が全体でいくらなのか計算しなくてはいけません。

金融機関に関しては、通帳や郵送物、キャッシュカードを探すところから始めましょう。口座開設や手続きをとった時に粗品として渡される、タオルや販促品もヒントになります。また、近所にある金融機関についても、可能性があるなら口座の有無を問い合わせてみると良いでしょう。

不動産については、固定資産税納税通知書や権利書をまず探してみましょう。市区町村単位であれば「名寄帳」を発行してもらうことで、故人名義の不動産を一括で調べることが出来ます。ただし、市区町村をまたいで様々な地域に不動産を所有している場合は、全てまとめて調べることは出来ません。

また、逆に負の遺産、つまり借金が後から見つかるということもあります。
借金は、基本的には相続人全員で引き継ぐものであって、誰かが代表して相続するようなものであはありませんが、遺産分割協議の段階で借金があることが分かっていれば、それを考慮して話し合いをすることが出来ます。督促状や、金銭貸借契約書がないか、銀行口座から不自然な入出金がないかどうかといったことに注意し、マイナスの財産についても見落としがないようにしましょう。

パターン⑤

ずっと昔から相続手続きをしていない不動産が見つかった!

不動産の相続手続きを進める中でよくあるのが、先代や先々代から引き継いできた土地や建物の名義がずっと変更されないままになっているパターンです。例えば、土地の所有者がもう亡くなったおじいさんやひいおじいさんのままになっている場合などです。

この場合、登記上の所有者が亡くなった時の相続から始めなくてはなりません。相続人を調べ、その相続人が現在生きているかを確認し、もしも亡くなっている場合は代襲相続(その人の子どもが相続権を持つこと)の可能性を検討し、代襲相続になるのであれば該当者についてまた調べて…といった感じです。相続の起点が過去に遡れば遡るほど、複雑で難解な手続きになっていきます。
場合によっては、最終的な法定相続人が100人以上になることもあるようです。
そこまでの人数になることは稀でしょうが、単純に1代限りの相続よりも手間暇時間と費用がかかるのは間違いありません。
そうなると、なかなか相続人自身で調査をするのは難しく、専門家に依頼するパターンが多い様です。

★法定相続人と代襲相続についてはこちらの記事もご覧ください。
相続手続きの最初の一歩~法定相続人を知ろう!

パターン⑥

相続人の中に認知症の人がいる!

相続人の中に高齢者がいて、その方が認知症の場合があります。認知症の程度にもよりますが、遺産分割協議に参加するだけの「意思能力」があるかどうかが問題になることがあります。

まず、「意思能力」について説明します。「意思能力」とは、自分が行っている法律行為の意味を認識し、その結果どうなるかをただしく判断できる力のことを言います。ここで言う法律行為とは、例えば「契約をする」「不動産を売る」「会社を設立する」「遺言書を書く」といったことのことです。

「意思能力」と遺産分割協議がどのように関係するかというと、もしも認知症によって「意思能力がない」場合、遺産分割協議に本人が参加することは出来ないのです。自分が行っていることが正しいことなのかそうでないのか、適切なのかどうなのかの判断が出来ない状態ということなので、当然と言えば当然です。
もしも、他の相続人が無理矢理本人の印鑑を押させたり、勝手に印鑑を借りて押してしまったりして、印鑑証明書も何らかの方法で取得出来たとしても、そうやって作成した遺産分割協議書は無効です。

では、もしも認知症が進行している方が相続人の中にいた場合、どのようにすればよいのでしょうか?
この場合、本人の代わりに遺産分割協議に参加する人を家庭裁判所に選んでもらう必要があります。この人のことを「成年後見人」と言います。この成年後見人には、親族がなる場合もありますが、弁護士や司法書士、行政書士といった専門家がなることもあります。選任された成年後見人は、本人の代わりに遺産分割協議に参加します。相続人と成年後見人が協議した結果、遺産分割協議書が作成されれば、無事に口座預金や不動産等の相続手続きを進めることが出来ます。

成年後見人の選任には時間と手間がかかります。また、専門家に手続きを依頼する場合は費用もかかります。遺産分割協議を始める為の土台作りがまず大変なのです。

勿論、認知症を患っているから必ず成年後見人が必要になるという訳ではありません。症状が軽ければ、ご自身で協議に参加することも出来るでしょう。相続人と本人だけで判断するのが難しい場合は、医師や専門家に相談した方が良いです。

相続手続きについてのお問合せは、当事務所へどうぞ!
お客様一人一人に寄り添った対応を心がけています。

北野早紀行政書士事務所
行政書士 北野早紀
TEL 029-896-5632