お墓は相続の対象じゃない!?~祭祀財産について解説!

お墓は相続の対象じゃない!?~祭祀財産について解説!

祭祀財産という言葉をご存知ですか?
祭祀財産とは、お墓や位牌、仏壇といったものをまとめた言い方です。
相続財産には様々なものがありますが、実は祭祀財産は相続財産とは別に考えなくてはならないのです。

この記事では、祭祀財産とは何か、相続の時はどのようにすればよいのかを解説していきます。


祭祀財産ってなに?

「祭祀財産」と言われても、あまり聞き慣れない言葉だと思います。

祭祀財産とは、簡単に言ってしまうとご先祖さまを祀る為に必要な財産のことです。例えば、お墓や、位牌、仏壇などです。家系図も祭祀財産に含まれます。
この祭祀財産は、法律では系譜、祭具、墳墓の3種類に分けられています。

  • 系譜
    先祖から子孫へと続く血縁関係のつながりを表した記録や絵図のことです。家に代々伝わっている家系図や家系譜などが該当します。
  • 祭具
    祭祀に使用される器具の総称です。例えば、仏像や位牌、霊位、十字架、庭内神祠などが祭具に該当します。仏壇や神棚等、取り外しが困難なものも祭具に該当しますが、仏間などの建物の一部を構成しているものは原則として祭具に該当しません。
  • 墳墓
    お墓のことです。墓石、墓碑、霊屋、埋棺などが墳墓に該当します。

祭祀財産は相続しない?

相続が発生すると、預貯金や不動産など、亡くなった方が所有していた財産を整理し、誰がそれを引き継ぐかをきめなくてはなりません。
亡くなった方がお墓や仏壇などを管理していた場合、これらも相続する人を決めなくてはならないと考えがちです。

しかし、実はお墓や仏壇と言った祭祀財産は相続財産とは別に取り扱わなくてはならないのです。
これは、誰も管理や引継ぎを出来ない・しなくて良いという意味ではなく、「相続人」とは異なる「祭祀財産の承継者」を決めなくてはならないという意味です。

相続放棄していた場合はどうなる?

相続財産は「相続放棄」をすることが出来ます。相続放棄をした場合、その人はそもそも最初から相続人ではなかったものとして扱われるので、プラスの財産も、マイナスの財産も、一切受け取ることはなくなります。
祭祀財産は、相続財産ではないので、例え相続放棄をした人であっても承継することが出来ます。

ちなみに、祭祀財産の承継には相続放棄のような規定がなく、承継の放棄や辞退は出来ないとされています。

  ★相続放棄についてはこちらの記事もご覧ください。
  相続に必要な手続き④~相続放棄・限定承認の検討

 


相続財産と祭祀財産の違いは?

さて、祭祀財産を相続財産と分けて考える、ということは、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか?
ここから、相続の際に知っておきたいその違いを紹介します。

その①

祭祀財産は分けない!

 

まずは、相続財産の基本からご説明します。
相続財産は、相続出来る人は法律で決められており(法定相続人)、遺言で指定された分け方で相続するか、法定相続人全員で相続財産の分け方を話し合って相続します。この話し合いを遺産分割協議と言います。
相続が発生した時から、分割方法や行き先(誰が承継するか)が決まるまで、原則的に全相続人で共有か、準共有している状態となります。
つまり、相続人のひとりが他の相続人に相談せず、勝手に預貯金を使ってしまったり、不動産を売ってしまったりすることは出来ません。

これに対し、祭祀財産は遺産分割の対象にならず、原則的に1人が承継します。承継する人のことを「祭祀承継者」と言います。
もしも、お墓や位牌等も他の相続財産と同じように扱ってしまうと、所有者がバラバラになってしまって祖先の供養や儀礼をするのが難しくなってしまう可能性があります。
さらに、ご先祖様を祀る方法は地域の慣習や各家庭によって様々で、相続のルールに沿って扱うことは馴染まないと考えられます。

このような理由から、「祭祀財産は相続財産に含めず、祭祀主宰者が単独で承継する」と定められたのです。

  ★遺産分割協議についてはこちらの記事もご覧ください。
  相続に必要な手続き⑤~遺産分割協議

 

その②

祭祀財産は相続税の対象にならない!

 

相続財産は相続税の対象となるので、法律で決められた金額以上の価値があれば、相続税の申告と支払いをしなくてはなりません。

これに対し、祭祀財産は相続税の対象にならないという特徴があります。
そのため、相続人の一人が祭祀財産を全て承継することになったとしても、その分相続税を多く払わなくてはならないといったことはありません。

祭祀財産は相続税の対象にならないということを利用して、税金対策として祭祀財産の購入を考える方もいますが、この場合は注意が必要です。
原則的には祭祀財産は相続税対象外ですが、あまりにも高価な仏具を購入した場合など、節税目的と考えられるものに関しては、相続税の対象となることがあります。
祭祀財産であれば絶対に課税されない、ということではないのです。

 

その③

祭祀財産を受け継ぐ人は、相続とは違うルールで決める!

 

相続財産の場合は、財産を相続することができるのは法定相続人か、亡くなった方が遺言などで指定した人だけです。

しかし、祭祀財産を受け継ぐ人(祭祀主宰者)は相続財産とは全く違うルールで決められます。

まず、最優先となるのは、亡くなった方が指定した人です。例えば遺言の中で祭祀主宰者が指定されていた場合は、それに従います。
次に、亡くなった方が誰も指定していなかった場合は、家や地域の慣習によって決められます。
それでも決まらず、揉めてしまったような場合は家庭裁判所の審判で決まります。

祭祀主催者となるのに、何か特別な制約はありません。血縁関係よりも、故人とどれほど親しかったかによって選ばれるべきとされています。
よって、親族関係であるかどうかや、苗字が同じかどうかといったことも問題とされません。

つまり、祭祀主宰者は相続人とは全く違う人がなる可能性があるのです。


香典は祭祀財産に入る?

お葬式の香典をどのように取り扱えば良いのか、悩む方は多いと思います。

一般的には、香典は祭祀財産には含まれないとされています。理由としては、香典は慣習上、喪主又は遺族への贈与であり、主に葬式費用に充てられることを意図しているものと考えられるからです。
この考えにより、香典は相続財産にも含まれないとされています。相続財産ではないので、香典には相続税はかかりません。

ちなみに、葬式費用については①相続財産に関する費用とする見解、②喪主あるいは祭祀承継者が負担すべきであるという見解があります。
①の場合は、相続財産の中から葬式費用を出すことになり、共同相続人が単純承認している時は各相続人が相続分の割合に応じて負担することになります。
見解は分かれますが、②の方が有力のようです。


祭祀財産のことを知ってスムーズな相続手続きを!

相続のことについておおよその流れを知っている方であっても、祭祀財産のことまでは知らなかったという方もいるかもしれません。

通常の生活の中では、お墓や仏具等を誰が受け継ぐか、ということを意識することは少ないと思います。。
しかし、相続が発生した時に「そういえば、どうすればいいのかな?」と慌ててしまうことがないように、祭祀財産というものがあること、相続の時にはどのように扱えば良いのかということを知っておくと良いですね。

 

相続手続きについてのお問合せは、当事務所へどうぞ!
お客様一人一人に寄り添った対応を心がけています。

北野早紀行政書士事務所
行政書士 北野早紀
TEL 029-896-5632