死後事務委任契約とは?~自分の死んだ後が心配な方へ

死後事務委任契約とは?~自分の死んだ後が心配な方へ

自分が亡くなった後、どのような手続きが必要になるかご存知ですか?
身近な方を無くした経験がある方はある程度知識があるかもしれませんが、全く想像できないという方もいるでしょう。死後の手続きというものは様々で、これをやれば正解という答えがあるものでもありません。
自分の死後、その手続きを誰がするか考えたことはありますか?
家族などの親族が思い浮かぶ人もいれば、親しい友人が思い浮かぶ人もいるでしょう。頼りになる人がいなくて、どうしようかと不安を抱えている人もいるかもしれません。
この記事では、人が亡くなった後の手続きを委任する契約、「死後事務委任契約」について説明します。


死後事務委任契約って何?

様々な理由で、自分が死んだ後のことを不安に思っている人はたくさんいます。家族や親戚がいない、いるけれど訳あって頼ることが出来ない、なるべく家族には負担をかけたくない、自分が面倒を見れなくなった後子どもがどうなるのか心配、など…。今は生活様式の多様化もあり、死んだ後の事は残された家族に任せれば安心、という時代ではありません。
このような時に「死後事務委任契約」を結ぶという選択肢が出てきます。

「死後事務委任契約」とは、読んで字のごとく死後の事務を委任する契約です。
死後の事務といっても、具体的にどのようなことをするのかイメージがつき辛いかもしれません。
具体的には、お葬式の手配、病院や施設への未払い分の費用の支払、遺品や住居の整理・処分、諸契約の解約などがあります。


どうやって契約するの?

死後事務委任契約は契約をするのに細かい様式が決まっている物ではありません。極端なことを言うと、口約束でも契約が成立します。
しかし、当然ながら口約束は言った言わないのトラブルになりますし、他の人に信用させることは難しいので、必ず書面で契約内容を残しましょう。

紙の契約書を作成する場合、今度はその契約書の内容が信用できるのかという問題が出てきます。例えば、相続人の中に死後事務委任契約の内容に納得がいかない人がいた場合、その契約は無効だと主張する可能性があります。そういった時に、これは間違いなく本人が望んだ内容であり、本人の意思に基づいて手続きを行うのだという証明が出来なくてはなりません。

対策としてはいくつか考えられます。まず1つ目は契約書を作成した際に最後に実印を押して、契約書と一緒に印鑑登録証明書を保管しておく方法です。実印と印鑑登録証明書は本人しか持ちえないものなので、実印があった方がこの契約は本人の意思によるものだという説得力が増します。

2つ目は、公正証書で契約書を作成する方法です。公正証書とは、公証役場で公証人という法律のプロにつくってもらう証書のことです。公正証書を作成する際には、必ず公証人が本人と面談し、本人の意思を確認した上で作成するという決まりがあります。契約書を公正証書にすることで、当事者以外によるチェック機能が働くというメリットもありますし、契約の有効性を客観的に証明することが出来ます。

委任契約=委任者本人が死んだら契約終了?

委任契約とは、通常委任者本人が死んでしまうとその時点で契約が終了します。しかし、死後事務委任契約は本人が死んだ後に効力を生じる契約なので、死亡と同時に契約が終了してしまっては全く意味がありません。

この点、死後事務委任契約の場合は「委任者が死亡した場合でも契約が終了しない」という特約条項を設けることで、委任者死亡後も契約を有効とすることが出来ます。


死後事務委任契約で出来ることは?

死後事務委任契約は契約時点で、どのようなことを委任するのかを決める必要があります。

死後事務の範囲はかなり広いので、全てを細かく指定して書き記すのはかなり難しいです。そのため、ある程度は包括的に委任内容を定めておいて、予想外の死後事務にも対応出来るようにしておくと良いでしょう。

しかし、あまりにも漠然とした内容だと、頼まれた方(受任者)としては手続きの方向性や指針を決めかねて判断に困る場面が多くなることが予想されます。それに、死後事務は亡くなった本人の為のものですから、本人の希望に沿ったものにならなければ意味がないと言えます。死後事務委任契約を結ぶ前に、予想される手続きを確認し、死後に「検討」と「選択」が必要となる事柄(例えば、死亡の通知先、葬儀会社の選定、お葬式の方法、埋葬方法、遺品の整理方法など)については元気なうちにある程度どうするか決めておき、委任内容に具体的に書いておくとよいでしょう。

 死後事務委任契約の委任事務の例

  • 知人や友人への死亡の連絡
  • 病院や入所していた施設の未払い費用の精算
  • 公共料金の精算
  • 公共料金やインターネット、その他契約の解約
  • SNSアカウントの削除
  • パソコンやスマホの処分、データ抹消
  • 遺品整理、不動産の明け渡し
  • 遺体の引取
  • 葬儀、火葬に関する手続き
  • 埋葬、散骨に関する手続き
  • 供養に関する手続き(あまりにも長期間に及ぶものは除く)
  • 住民税などの税金納付
  • 健康保険証返還
  • 運転免許証返納
  • パスポート返納

後見人制度との関係

後見人という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。後見人とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した方を保護するための制度です。

ここでは詳しくは触れませんが、大きく2つの制度があります。

【法定後見制度】
本人が判断能力が低下している状態で、後見がスタートします。家庭裁判所が成年後見人等を選び、本人の為に財産を守ったり身上監護を行います。

近年、法改正で成年後見人等が限られた範囲で死後事務を行うことが出来るようになりましたが、原則的には本人の死亡と同時に成年後見人の仕事も終了します。本人死亡後の様々な手続きは成年後見人が行うべきではないとされており、行うことが出来る死後事務はあくまでも例外的な扱いです。

【任意後見制度】
本人が元気で自分で契約が出来るうちに、自分の判断能力が低下することに備えて任意後見契約を結ぶものです。成年後見とは違い、後見人を自分で選ぶことが出来ます。
任意後見契約は、本人の死亡により終了するため、任意後見人が死後事務を行うことは基本的に出来ません。

一方で、死後事務委任契約の受任者は死亡届を提出することが出来ず、任意後見人か任意後見受任者であれば提出することが出来るという決まりがあります。死亡届の提出を委任者が希望する場合は、任意後見契約と死後事務委任契約の両方をむすぶ必要があるということになります。


見守り契約との関係

見守り契約とは、主に定期的に連絡をとったり訪問したりすることによってトラブルを回避したり健康管理をする契約のことです。決まった方式があるわけではないので細かいルールは契約者間で話し合って決めることとなります。

死後事務委任契約は契約の効力を適切な時期に発揮させる必要があります。つまり、委任者が亡くなったことがすぐに分かるようにしておかなくてはならないのです。受任者が普段から顔を合わせる間柄であれば問題ありませんが、法律専門家と死後事務委任契約を結ぶ場合は見守り契約とセットになることが多いでしょう。

もうひとつ知っておきたい…財産管理契約とは?

任意後見契約、見守り契約、死後事務委任契約と合わせて検討されるものとして、財産管理契約というものがあります。
財産管理契約とは、自分の財産の管理などを第三者に委任する契約です。全部を委任する必要はなく、一部について委任することも出来ます。例えば、口座Aは自分で管理するけど口座Bは財産管理契約で管理を委任する、などです。
この契約は判断能力が低下する前の段階で、身体の具合が悪く銀行に行くのが難しい方、自分で適切に財産を管理する自信がない方などにニーズがあります。
判断能力が低下してからの財産管理は、任意後見や法定後見を利用することになります。


遺言書との関係

遺言書も、書いた人(遺言者)が亡くなった後で効力をもつ点では死後事務委任契約と同じです。
しかし、遺言書は書くことが出来る事柄が法律できめられており、それを「法定遺言事項」と言います。遺言で書くことが出来るのは、主に遺言者が亡くなった後の財産の分け方についてです。法定遺言事項以外のことを書いても法律的には意味がありません。

逆に、死後事務委任契約で財産の処分について触れる場合は気をつけなければいけません。死後事務委任契約の委任者が遺言も書いていたような場合、遺言事項に抵触するような内容になったら大変です。
日用品の形見分け程度であれば死後事務委任契約の内容に盛り込むことも考えられますが、相続財産の分け方について、特に価値の高い財産や預貯金の相続については遺言書を書き残すようにしましょう。

★遺言書についてはこちらの記事もご覧ください。
遺言の基本を知ろう!
遺言に書けることは決まっている!~遺言事項について


誰に相談すればいい?

死後事務委任契約は契約者本人の死後の事務について委任をする契約です。自分の中で「こういったお葬式にしほしい」「自分が死んだら〇〇さんに連絡してほしい」「お墓は~~という風にしてほしい」「あの契約も死んだら解約しないと…」と思っていても、当然ながら自分の死後の手続きを自分自身で行うことは出来ません。生前、元気なうちに、第三者によって自分の希望通りに死後の手続きが行われるように契約をするのです。
特別な資格を持っている人でなくても、委任を受けることが出来ます。例えば、古くからの付き合いである友人と死後事務委任契約を結ぶ、ということも可能です。
しかし、死後の事務は煩雑ですし、法律の知識を持っていないと判断が難しい場面も出てきます。そのため、法律に詳しい専門家が受任者となることも多いです。
最近は、自治体によっては地域の社会福祉協議会などと死後事務委任契約を締結することが出来る福祉サービスもあるようです。

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北野早紀行政書士事務所
行政書士 北野早紀
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