外国人が日本で起業する場合~経営・管理ビザについて解説!

外国人が日本で企業する場合~経営・管理ビザについて解説!

外国人が日本で企業する場合、会社を経営するためのビザを取得する必要があります。
ここでは、会社に勤務する場合のビザと経営するためのビザはどう違うのか、経営・管理ビザを取得するにはどうすれば良いのか、といったことを解説します。


在留資格「経営・管理」とは?

この在留資格は、日本で事業の経営を行う場合や、事業の管理に従事する場合に取得するものです。
事業の経営を行う場合とは、具体的には日本で代表取締役や取締役といった役員になることなどが当てはまります。
事業の管理に従事する場合とは、その企業等の内部組織の中で管理業務を行うことをいい、具体的には部長や工場長、支店長などを務める場合が該当します。

企業と雇用契約を結んで仕事をする時には、技術・人文知識・国際業務(技人国)などの在留資格が必要となります。
この技人国ビザでは、企業に就労することは出来ますが経営することは出来ません。その為、外国人が代表取締役を務める会社で、外国人従業員を雇用する場合は、代表取締役は経営・管理ビザ、従業員は技人国ビザなどの就労ビザを取得することになります。


どんな活動が当てはまるのか?

経営・管理ビザ該当する活動は、次のように規定されています。

「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(以下省略)」

経営を行う活動と、管理に従事する活動の例は既に述べた通りです。
ここから経営・管理ビザの活動についえ、注意が必要なポイントを紹介します。

POINT①

「名ばかり経営者」ではダメ!

 

実際に経営や管理には関わらず、とりあえず名前だけ登録するような、名ばかり経営者では経営・管理ビザを取得できません。
実は、経営・管理ビザは学歴要件がないため、ペーパーカンパニーを設立して日本に在留しようと考える悪い人もいます。
その為、審査では本当に事業を始めるつもりがあるのか?経営者としてやっていけるのか?といったことを様々な角度から厳しく見られるのです。申請時点で、事業体制や事業計画・経営見通しがしっかりしていないと、本当に事業を成功させる気があるのか?と疑われてしまいます。

これから事業を開始しようと思って経営・管理ビザの取得を目指す場合、申請時点ではまだ実績や売り上げがないはずです。
その為、申請人が実質的に事業の経営を行うかどうかは、事業開始に至るまでの経緯や、事業計画書の内容等で審査されます。

事業計画書では、その事業の「安定性」と「継続性」を証明する必要があります
内容は、具体的で現実的なものでなくてはなりません。例えば、取扱い品目、取引先、商品仕入れルート、販売ルート、価格設定、一般管理費の見込み、収支見積もりなどを記載します。事業計画書を裏付ける資料があればなお良いです。

POINT②

経営者兼労働者はダメ!

 

新しく事業を始めようとする場合、最初から従業員を複数雇用して経営していくのは確かに大変です。
経営・管理ビザでは、経営者が現場で働くことを一切認めていない訳ではありません。
例えば、中華料理店のオーナーが少し調理業務をしたとしても、それだけで違法行為とはなりません。
しかし、あくまでも認められるのは臨時的・突発的な場合であって、日常的に現場仕事をしている場合は資格外活動となってしまいます。
先ほどの例で言うと、中華料理店のオーナーが臨時的に調理業務をする分には許容されますが、毎日混雑するランチタイムは調理場で料理を作っているという場合は認められません。
他には、英会話教室を経営する外国人が、自分が教師となって生徒に英語を教えることも、経営・管理ビザでは認められません。
審査では、現場仕事が必要な事業を始める場合は、必要な人員が準備できているか?今はいないとしても、採用する見込みがあるか?ということをチェックされます。
もしも、レストランを始めるからと経営・管理ビザを申請した時に、従業員を見込みも含めて全く用意していない場合は、経営者一人ではレストラン経営は不可能と判断されるでしょう。


経営・管理ビザを取得できるのはどんな人?

経営・管理ビザを取得するには、要件を満たさなくてはなりません。ここではその要件を紹介します。

申請人が次のいずれにも該当していること。
①申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されている事。
②申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること
 イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に移住する2人以上の常勤の職員(法別表第1の上欄の在留資格をもって在留する者を除く)が従事して営まれるものであること。
 ロ 資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること。
 ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。
③申請人が事業の管理に従事しようとする場合は、事業の経営又は管理について3年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

 

事業所要件について

事業所は、賃貸物件の場合は賃貸借契約書の内容を確認しましょう。契約書内に、「事業用としての使用を許可する」「飲食店としての使用可」などの、そこで事業を行うことが認められている事がわかる文言が必要です。
また、1か月などの非常に短い期間毎に契約が必要なレンタルスペースや、バーチャルオフィスを事業所とすることは認められません。
自宅兼事務所にしたいという人もいると思います。そういった場合、居住部分と事業所がはっきりと分かれていなくてはなりません。例えば、入り口が居住部分と事業所部分で別々になっていて、中でも明確に区切られている場合や、1階が事業所で2階が居住部分である場合は許可される可能性があります。

事業所の備品や什器もそろえる必要があります。一般的に、事務所に必要なもの(机、椅子、パソコン、プリンター、電話 など)が備え付けてあるのかは、写真で必ず確認されます。さらに、建物や郵便受けに事業所の看板・標識があるかどうかもチェックされます。

事業を始める為に物件を選ぶときは、契約した後で条件に適合しないことが分かったということがないように、事前によく調べてから慎重に選ぶようにしましょう。

事業規模要件について(経営業務の場合)

申請時点で、日本に住む日本人や、「永住者」「永住者の配偶者」「定住者」で在留する外国人を2人以上正社員で雇用していれば、②の要件はクリアできます。
しかし、実際は500万円以上出資して会社を設立する場合がほとんどです。
この出資金500万円は、その出所についても説明出来るようにしておかなくてはなりません。
特に、留学生が卒業後に起業する場合では、「留学生だったのになぜ500万円もの大金を用意できるのか?」「学生時代に違法なアルバイトをしていたのではないか?」といったことを疑われます
500万円をどのように用意したのか、根拠と合わせて説明して誤解のないようにしましょう。

管理者要件について(管理業務の場合)

外国人が事業の管理業務を行う場合は、実務要件と報酬要件をクリアしなくてはなりません。
大学院を卒業した経歴がある人の場合は、専攻内容が経営に係るものであれば実務要件の年数にカウントできるので、学生として勉強していた期間が3年以上であれば、実務経験がなくても要件を満たすことができます。

報酬要件については、基本的には同じ職場で同じような仕事をしている日本人の給与額と比較して判断されます。しかし、そういった人が社内にいない場合は、同業の会社で同じ仕事をした場合の賃金が参考とされます。


経営・管理ビザは下準備が大事!

ここまで経営・管理ビザのことについて解説してきました。
経営・管理ビザは申請をする前に事業所を確保し、会社を設立・登記し、事業計画書をつくり…と準備に非常に手間と時間がかかります。
審査も厳しく行われるので、よく経営・管理ビザは取得難易度が高いと言われています。

しかし、日本でビジネスを成功させるぞ!という強い気持ちで真摯に取り組むならば、事業に適切な場所と人員を確保して、必要な手続きを順を追って済ませ、事業計画をたてて起業後の経営を安定させるよう努力し…といったことは必要不可欠なはずです。確かに、在留資格の手続きならではの留意点もありますが、要点をおさえてしっかり準備すれば対応できます。

また、経営・管理ビザを更新する際は、それまでの経営状態・財務状況についても見られます。経営・管理ビザを取得した後は、それで安心せず、早く経営が安定するように頑張りましょう。

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北野早紀行政書士事務所
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