外国人が日本人と結婚後、離婚したら?~離婚後のビザについて解説!

外国人が日本人と結婚後、離婚したら?~離婚後のビザについて解説!

昨今、離婚は決して珍しいことではありません。厚生労働省の人口動態統計によると、2021年の離婚件数は18万4384組のカップルが離婚しているという結果になりました。
そのうち、夫婦のどちらかが外国人のカップルの離婚数は全体の4.6%となっています。夫婦それぞれ全く違うルーツをもち、別文化で育ったわけですから、考え方や習慣の違いから結婚生活が続かなくなってしまう人もいるでしょう。
様々な理由から、離婚を選択した場合、外国人の方は在留資格への影響を考えなくてはなりません。
この記事では、外国人の方は日本人と離婚した場合、在留資格に関してはどんな手続きが必要なのか、ということについて解説します。


外国人と日本人の離婚・・・まずは現在の在留資格(ビザ)を確認!

外国人の方は日本に在留している間、何らかの在留資格(ビザ)を取得しているはずです。
日本人と結婚している方は、ざっくり言うと「就労ビザを持っている人」と「日本人の配偶者等ビザ(配偶者ビザ)を持っている人」のどちらかであることが多いかと思います。
離婚した時点でどちらのビザを所有しているかによって、必要な手続きが変わってきます。


離婚時点で就労ビザを持っている人の場合

就労ビザとは、日本で仕事をすることを目的として来日した方が取得するビザです。就労ビザ、という在留資格があるわけではなく、就労するためのビザの総称です。代表的なものとしては、「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」、「技能」などがあります。

就労ビザの場合、日本での在留要件はその人の仕事と結びついています。そのため、配偶者の有無や、配偶者の国籍は関係ありません。
つまり、就労ビザで在留しているのであれば、結婚しようが離婚しようが、在留資格という点においては全く問題ないのです。
就労ビザで在留している場合で気を付けなくてはならないのは、退職・転職した場合や、配置転換などで従事する職務内容が変更になる場合だけなのです。

ただ、もともと就労ビザを持っていた人でも、日本人と結婚したタイミングで配偶者ビザへ変更する方も多くいます。
それは、配偶者ビザに変更するメリットがあるからです。(デメリットも勿論あります)
配偶者ビザで在留している人は、次の「配偶者ビザを持っている人の場合」をご覧ください。


離婚時点で配偶者ビザを持っている人の場合

ここでいう配偶者ビザとは何かというと、日本人と結婚をして、日本人の妻ないし夫という身分に基づいて取得できるビザです。
その為、正確な名称は「日本人の配偶者等」という在留資格になります。

★配偶者ビザについてはこちらの記事もご覧ください。
外国人と日本人が結婚した時~配偶者ビザについて解説!

これは身分に基づいて取得できるビザなので、身分に変更があった場合はビザも変更手続きが必要となります。

この記事のテーマである離婚が最も分かりやすい例です。
外国人が日本人と離婚してしまうと、その時点で日本人の配偶者ではなくなるので、配偶者ビザで日本に居続けることは出来ません。
出国するか、他の在留資格への変更をしなくてはなりません。

離婚したらすぐにビザの変更が必要?

離婚したらただちにビザの変更が必要なのでしょうか?
配偶者ビザで在留している外国人が離婚した場合、離婚してから、正当な理由なく6か月以上配偶者ビザのままでいると、在留資格の取消事由に該当します。逆に言うと、6か月間は猶予期間があるのです。

もっとも、ビザの変更手続きとは別に「配偶者に関する届出」というものをしなくてはなりませんので、何もしなくてもいいという訳ではありません。この「配偶者に関する届出」は離婚から14日以内に出さなくてはなりません。
この届け出は、地方出入国在留管理官署に行って届け出ることも出来る他、郵送やインターネットでも届出を受け付けています。届出の内容は決して難しいものではありませんので、忘れずに期限内に行うようにしましょう。

 


配偶者ビザで離婚した場合、どのビザに変更する?

配偶者ビザを持っている人が離婚した場合、変更できる可能性があるビザはいくつかありますので、ご紹介します。

パターン①

離婚後すぐに再婚する場合

 

離婚後に再婚の予定がある場合は、再婚相手によってとるべき手続きが変わってきます。

別の日本人と再婚

日本人と離婚して日本人と再婚する場合、必要な在留資格は「日本人の配偶者等」で変わりません。しかし、次回更新の際には前回と相手が変わっているわけですから、新規で配偶者ビザを取得するのと同じように審査されます。場合によっては、更新が認められないこともあります。

永住者と再婚

再婚後の相手が永住者ビザで在留している外国人の場合、「永住者の配偶者等」という在留資格へ変更する必要があります。
永住者の配偶者へ変更する場合も、日本人配偶者と結婚する場合と同様、偽装結婚ではないこと、これから夫婦生活を送るにあたって十分な経済力があることなどが審査されます。

就労ビザで在留中の外国人と再婚

再婚後の相手が就労ビザを持っている外国人の場合、「家族滞在」という在留資格へ変更する必要があります。
家族滞在ビザの場合、配偶者ビザ(日本人の配偶者等ビザ)と違い、就労が厳しく制限されます。資格外活動許可を得たうえで、週28時間までの就労であれば許されます。今まで配偶者ビザで働いていた人は、同じ感覚で働いてしまうと資格外活動違反となってしまうので、気を付けましょう。

再婚する場合の注意点

離婚後すぐに再婚する場合は、再婚禁止期間に注意しなくてはなりません。日本の場合、民法で離婚してから100日間は再婚をしてはいけないと決められています。もしもこの100日間の間に配偶者ビザの在留期限を迎えてしまう場合は、いったん帰国するか、短期滞在などの他のビザへの変更を検討しなくてはなりません。
外国人の本国での再婚禁止期間がないかどうか、その点も忘れずに確認する必要があります。再婚禁止期間がない国もあれば、日本よりも長い国もあります。本国の再婚禁止期間中に再婚することがないようにしましょう。

さらに、離婚・再婚の経験が複数回ある場合は、偽装結婚などを疑われやすいので、審査は厳しくなります。
離婚しても新たなパートナーがいれば別のビザに変更できると、安易に考えるのは危険です。

 

パターン②

日本の企業等で働いている場合

 

日本で就労しているのであれば、就労ビザへの切り替えが可能な場合があります。
例えば、仕事の内容が所謂ホワイトカラーの職種であれば、技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国ビザ)への変更を検討しましょう。
技人国ビザは、学歴要件や職歴要件があるので、まずは自分が最低限の許可要件を満たしているかを確認する必要があります。
また、在籍する会社で用意しなくてはならない書類も多いので、必ず会社へ事情を説明し協力して貰わなければなりません。

★技人国ビザについてはこちらの記事もご覧ください。
就労ビザの代表格~技術・人文知識・国際業務ビザについて解説!

 

パターン③

パターン①と②以外で、日本に暮らし続けたい場合

 

すぐに再婚する訳ではないし、今現在ホワイトカラーで働いている訳ではないけれど、離婚後帰国せずに日本に居続けたい…という方の場合です。この場合、「定住者」という在留資格に変更できる可能性があります。このパターンを「離婚定住」と呼ぶことがあります。

定住者へ変更するにはいくつかの要件がありますので、紹介します。

離婚定住要件
1.日本で概ね3年以上正常な婚姻関係・家庭生活が継続していたと認められること
2.これから生活していけるだけの資産又は技能があること
3.日常生活に不自由しない程度の日本語能力があり、通常の社会生活を営むことが難しくないこと
4.公的義務を履行していること・履行が見込まれること

 

3年以上の婚姻関係を計算する際、もしも別居していた期間があっても、その間の夫婦としての関係が認められれば問題ありません。また、元々の配偶者ビザで許可されていた在留期間が3年や5年でなく、1年であっても、3年以上普通の夫婦としての関係が継続していたのであれば、許可される可能性があります。
また、もしも元配偶者との間に子どもがいて、その子どもを日本で養育する必要がある場合は、婚姻期間が3年未満であっても許可されることがあります。

公的義務については、税金をきちんと納税しているかといったことが見られます。
日本語能力については、書類を書いたり、面接での受け答えが問題なく出来る程度の日本語力があればよく、日本語能力試験の受験などは必要ありません。

審査では、今後日本で安定して生活していけるのか、ということと共に、何故離婚に至ったのか、ということも重視されます。
離婚の原因が配偶者からのDVであるような場合は、許可される可能性が高くなります。その他、例えば配偶者がギャンブルで多額の借金をつくってしまった場合や、浮気されたことが原因での離婚は許可の可能性が高いです。
離婚に至った経緯について、提出した資料や入管で管理している今までの在留記録だけではなく、元配偶者へ聞き取りを行う場合もあるので、その点は注意が必要です。

ここまで離婚定住の要件について説明してきましたが、離婚を原因とした定住者ビザへの変更は要件を満たせば必ず許可される、というものではありません。
離婚定住とは、他のビザには当てはまらないけど、色々な事情を考慮して日本に在留することが許された時に取得できるビザです。
そのため、定住者ビザへの変更申請をする場合であっても、不許可になった場合にどうするのかを考えておくと良いでしょう。


離婚する時は状況や立場によって様々な可能性を検討しよう!

離婚は、ただでさえ精神的にも経済的にも負担が大きい場合が多いです。外国人の方が日本で離婚をした場合は、ビザのことについても考えなくてはなりません。
離婚をした後の道は人それぞなので、状況を整理し、様々な可能性を探っていく必要があります。
まずは、離婚から14日以内に「配偶者に関する届出」を忘れずに出し、6か月以内に他のビザへの切り替えが出来るように準備をすすめましょう。

 

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北野早紀行政書士事務所
行政書士 北野早紀
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